小悪魔な彼にこっそり狙われています
そんな来栖くんに、桐生社長だけは楽しげに笑うと、スーツの胸ポケットからルームキーをひとつ取り出す。
「じゃあ、キミにはこれをあげよう」
「え?」
「いくら社長でも僕に井上ちゃんをどうこう出来る権利はないから、あとは各自で話し合うんだね。ふたりきりで」
来栖くんはそれを受け取り「どうも」と小さく頭を下げると、スタスタとステージを降りる。
そしてこちらへ真っ直ぐにやってくると、私の腕をぐいっと掴んだ。
「えっ、わっ……来栖くん!?」
戸惑うこちらに目も向けずそのまま歩き続ける彼に、よろめきながらも慌ててついていく。
どうして?
『井上さんが、ほしいです』
なんてそんなことを、しかも皆の前で言い切るなんて。
からかっていたくせに。どうせ離れていくくせに。
そんな、後戻り出来ないようなことをするなんて。
本当によく分からない人。だから私はいつも戸惑ってばかりで、困る。
……けど、嬉しいと感じてる。そんな自分がいる。