小悪魔な彼にこっそり狙われています
『はぁ!?どういうことよ、それ!!』
……ところが聞こえてきたのは、いつも壁越しに聞こえる彼女の声。
なんだ、誰かを叱っているのだろうか。そう階段の陰から覗き込むと、11階の非常階段ではスマートフォンを片手に眉をつりあげる澪さんがいた。
『だからっ……会って話したくないってどういうこと!?そりゃあ、私も喧嘩腰になって悪かったけど、この前のデートだって途中で帰ったし……』
その言葉から察するに、相手は彼氏なのだろう。そして話の内容はあまりいいムードのものではないのだろう。
そう考えている間にも、彼女からは『別れる』『そっちこそ』と別れ話のような言葉たちが聞こえてくる。
『こっちこそ大嫌いよ!!』
そしてついには、そのひと言とともに通話を切ってしまった。
……あー、終わったな。これは完全に別れた。
興奮や怒りを抑えているのか、息荒くスマートフォンを握っている彼女に、そう察する。