小悪魔な彼にこっそり狙われています
え、ええい!とりあえず一度は誤魔化してみよう!
「あの、昨日は大変お世話になりました!ご、ごめんね、酔っ払って大変だったでしょ!」
あくまで昨夜から今朝にかけてのことはなかった前提で謝る私に、来栖くんは表情を変えずに答える。
「あー……こちらこそ。ごちそうさまでした」
「どういたしまして……って、待って!?ごちそうさまでした!?」
「はい、井上さんを」
ごちそうさまでしたってことは、よかった、私が彼をいただいちゃったんじゃなくて、彼にいただかれちゃったんだ……って!そうじゃなくて!
昨夜の出来事が本当にあったのだと確信させられ、それまで装っていた平静も崩れる。
『なんてこと』と頭を抱える私に、私より20センチ近く高い位置にあるその顔は意味がわからなそうに傾げられた。
「……で、なんで今朝逃げたんですか」
「え!?いや、逃げたっていうか……」
逃げたっていうか、まぁ、逃げたんだけど……!
言い訳を探すように視線を泳がせる私を、彼はじっと見る。
逃がさないとでも言うかのようなその目に、観念しそれ以上の誤魔化す言葉を飲み込んだ。