小悪魔な彼にこっそり狙われています
『……ありがとね、くるすくん』
すると、ぼそっとひと言がつぶやかれる。
『ほんと、めんどうみよくてびっくりしちゃうよ……やさしくされなれてないから、こまる』
不安定なその声は、酔っているだけにも聞こえる。けれど、俺にはそれだけには思えなかった。
揺れて震えるその声は、きっと、泣いている。
どうしてかそう直感した俺は、先ほどは見ることのできなかったその顔を枕から上げさせた。
こちらを向いた彼女は、その瞳から涙をこぼしていて、それはあの日の泣き顔と重なった。
その涙を見た瞬間、この体は動いていた。
伸ばした手でそっと涙を拭い、いけない、そう思いながらも止まることは出来ず、彼女にキスをする。
初めて触れた唇は、小さくやわらかく、ほのかに口紅の香りがした。