小悪魔な彼にこっそり狙われています
自分にがっかりしながら再度廊下の先の彼を見れば、通りがかった女性社員は来栖くんを見て当然驚き、慌ててハンカチを渡している。
……そうだよね、普通はすぐにハンカチを渡して言葉をかけるものだよね。
それに対して私はさっき、『ごめん』のひと言も言えなかった。
……なんで私、こんなにかわいげがないんだろう。
自分があまりにも情けなくて、呆れてしまう。
言葉はきつい、素直に謝ることもできない。
半年前に別れた元カレにも、『そういう気の強いところが嫌だ』って、言われてフラれたのに。
その痛みも、ろくに活かせやしない。
私だって、昔からここまできつい性格だったわけじゃない。
むしろ課長という立場についた頃、最初は優しい言い方を心がけていた。上司としてではなく、仲間としてまとまりを作ろうと、思っていた。
だけど、そんな生ぬるい考えの私を、周囲は笑った。
『どうせ怖くない』『だから仕事をサボっても、ミスをしても大丈夫』『謝れば許してくれる』、そうあざ笑っていたんだ。