小悪魔な彼にこっそり狙われています
それに気づいた時、このままじゃいけないと思った。
仕事は仕事だ。多少『怖い』と避けられてしまっても、厳しさを忘れて秩序を保てなくなってはいけない。
それが自分の仕事だ、とそんな殻で自分を守るたびに、どんどんキツさを増していく。
次第に甘えることも下手になって、かわいげのない自分が当たり前になってしまった。
「……けど、さっきのはさすがに悪かったよね」
そんな私を注意して、八つ当たりで返されて、びしょ濡れになって……来栖くんにとっては散々だっただろう。
けど彼は普通の顔のままで、本当なにを考えているのか、どう思っているのかがわからない。
……いや、顔に出ないだけで心の中では怒っているのかもしれないけどさ。
「……はぁ」
どうしてこうも、悩み事が尽きないのだろう。深いため息がひとつこぼれる。
気が沈むなぁ……。よし、こんな時はあの場所だ。今日は残業を早めに切り上げて、あそこに行こう。
そう心に決めると、私は自分が男子トイレの中にいるままだったことに気づいて、すぐその場をあとにした。