小悪魔な彼にこっそり狙われています



「あ……えと、来栖くん」

「あれ、来栖?おはよう、早いな」



言いすぎた。そう気付き言葉を撤回しようとするものの、背後からやってきた秘書課の男性社員の声に声はかき消されてしまう。

その声に来栖くんも私から距離を取ると、「おはようございます」となにもなかったかのように男性のもとへと向かって行った。



……最低だ、私。言いすぎた。

こんな自分が本当に嫌になる。



かわいくない自分は、何度伝えられても、その気持ちを信じることもできない。



『笑ってるほうが、かわいいです』



彼がくれた、おまじないの効果が薄れていく。

代わりに色濃く思い出されるのは、あの日の元カレの別れの言葉。



『そういうところが嫌いなんだよ』



かわいげのない私は、その言葉に『どうして』とも『ごめんなさい』とも言うことが出来なかった。

あの彼女のように泣きつくことも出来なくて、代わりに出た言葉は



『こっちこそ、大嫌いよ!!』



なんて、売り言葉に買い言葉のセリフ。



こんな私だからこそ、来栖くんを幸せに出来るのは彼女のほうなんじゃないかって。一方的で身勝手な気持ちを押し付けた。

これまで彼が伝えてくれた想いを、無視して。



痛む胸にぐっと唇を噛むと、感情を堪える代わりに鉄の味が口内に滲んだ。






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