小悪魔な彼にこっそり狙われています





それからは、来栖くんと顔を合わせる機会もなく1日が過ぎてしまった。



いつもなら秘書課に行けば来栖くんは割と高い確率でいるのに今日はなかなかいないし、彼が総務課のオフィスに来れば私が忙しくて会話をする暇はないし……。

どうにか謝るきっかけに会話のひとつでも、と思うのに、こういう時ほどタイミングが悪いものだ。



「はぁ……」



デスクにつき深いため息をついて見上げれば、壁にかけられた時計は18時半を指している。



会議に出ても、デスクワークをしても、1日中なにをしても集中できなかった……。

来栖くん、怒ってるかな。傷つけたかな。なんて言えばいいかな、こんな自分が目を見て謝ることができるかな。

朝からずっと同じことを自分に問いかけて、答えも出せずに悩むばかりだ。



そのおかげで目の前のパソコンの画面の中の仕事は、予定より大幅に遅れている。

けれど今日はこれ以上仕事を続けても進まないことは明らかだ。続きは明日に回して、今日は帰ろう。



そう考え、私は席を立つと帰り仕度の前にトイレでも行こうかと廊下へ出た。



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