小悪魔な彼にこっそり狙われています



「あ、あれ?来栖くん、先にあがったんじゃ……」

「えぇ、定時であがりましたけど本屋とか寄ってて。それよりどうしたんですか、井上さんがたずねてくるなんて珍しい」



朝の不穏な空気はどこへやら。来栖くんの態度はいたっていつも通りで、つられるようにこちらも普通の顔で答えようとした。

ところがその時、ポツ、と水滴が頭上に落ちた。



「ん?」



その冷たさに顔をあげると、少し暗い空からはポツポツと小雨が降りだす。



「雨……予報では今日降るなんて言ってなかったのに」

「とりあえず、うちにあがってください。濡れちゃうんで」



来栖くんはそう言って私の肩を抱くと、少し強引にマンションの中へと連れ込む。



たずねようか迷っていたところで、いきなり来栖くんが現れて、そのうえ雨まで降るなんて……都合がよすぎる展開だ。

けど、見えないなにかが私に『伝えろ』と言っている気がして、躊躇うことなく彼の部屋へとあがった。





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