腹黒御曹司がイジワルです
突き当たりを右に曲がると、従業員の出入り口があった。
彼はそこで立ち止まり、私を見つめる。
ここは死角になっていて、トイレに来た人からも見えない。
「今日の我妻、きれいだね」
えっ? 今、呼び捨てした?
「あ、ありがとう……。あの……なにか話でも?」
「ううん。さっき目が合ったから」
宮城君の視線が突き刺さる。
「それだけ? あれはたまたまだよ。それじゃ……キャッ」
戻ろうとすると、行く手を阻むように彼の長い手が壁に伸びた。
「もう少し話そうよ。俺、あそこに戻るのイヤなんだ」
なんだか、王子スマイルで愛想を振りまいているときの彼とは違う。
目が鋭く、声もワントーン低い。
それに『俺』なんて彼が言うのを初めて聞いた。
「どうして? モテモテじゃない」
「モテたくない人にモテてもねぇ」
ニヤリと笑う彼は、いつもの柔らかい雰囲気の欠片もなく、戸惑ってしまう。