憂鬱な午後にはラブロマンスを
二人一緒に部屋から出ると他の社員達の目に留まっていた。それ程大きな旅館ではない為に、どこへ行っても社員の誰かと目を合わせてしまう。
以前なら社員の目に気が休まらずあまり良い気はしなかった俊夫だったが、今年は珠子にプロポーズの返事をもらえかなり上機嫌になっていた。
「あまり飲み過ぎて騒がない様に頼んだよ、君たち!」
笑顔な上に浮かれ声で注意されても周りの社員達は気味悪がるばかりであまり効果はなさそうだ。
ついさっきの宴会場での出来事に社員らの視線が好奇の目をしているのを感じた珠子だが、浮かれている俊夫には全く気にならなかった。
「あの、急ぎましょう。社長。」
社員からの視線が珠子には耐えられない程に痛く感じた。
「あ、ああ。そうだね。」
俊夫と二人玄関ロビーへ向かう間にも社員達の好奇な目は無くならなかった。それどころか、社員らが他の社員へと伝え余計に見物人が集まる始末。
まるで見世物のような扱いに珠子は息をするのさえ苦しくなりそうだった。
もしかしてこの中に洋介がいるのではないかと思うと生きた心地がしなかった。
つい今しがた俊夫のプロポーズを受けたばかりなのに珠子は洋介がどんな顔をするのか怖くて隠れてしまいたかった。