憂鬱な午後にはラブロマンスを
俊夫はキスをしっかり堪能すると珠子を抱き起し食事に行こうと誘った。
宴会場は途中で抜け出したのだから二人ともお腹が減っているだろうからと旅館の外へ食事へ行くことにした。
「私、服はこれしかないの。」
「いいよ、途中でどこかお店を見つけて着替えよう。」
「でも、そこまでしなくても。」
「婚約の記念日だ。オシャレして美味しい料理を食べよう。俺達の記念日なんだから。」
嬉しそうに言う俊夫はまるで恋する女の子のようだ。
本来ならば珠子がそんな気持ちになるはずなのに、肝心の珠子にはそこまでの嬉しさはなかった。
穏やかな生活と子ども達に囲まれた幸せな生活の為に選んだ俊夫とは激しい感情は必要ない。
だから、俊夫のように記念日を祝ったり感動したりすることはない。
珠子の瞳には喜びが見えない。
すると、俊夫はそんな珠子を抱きしめた。
「欲しいのがあったら言ってくれよ。何が欲しい?」
「欲しい物はないわ。あるとすれば夕食ね。」
「同感だ。もう珠子が俺のものになったから他には何も要らないよ。」
「子どもは?」
「珠子との子どもは別格だよ。最低3人は欲しいな。」
悦びで声が高々となる俊夫とは裏腹に珠子の声は沈んでいた。