憂鬱な午後にはラブロマンスを

洋介の冷たい視線を浴びると、俊夫はわざと珠子の腕を掴み一気に引き寄せた。
すると、洋介は俊夫の腕をつかみ珠子の腕を外させようとした。


「彼女の体は繊細なんだ。そんな力任せでは骨が折れてしまう。」

「それは悪かったね。少々気が苛立っていたものだから。」


珠子の腕を離そうとしない俊夫に、洋介もまた俊夫の腕を掴んだまま離そうとはしない。

二人は睨みあいを続けたが、それもほんの一瞬の出来事なのに二人の間では数分、或いは数十分も睨みあっていたように感じた。


「珠子は俺の女だ。連れ出すのは止めてもらいたい。」


洋介の口から出た言葉に宴会場は静まり返った。
そして、二人の睨みあいが珠子の奪い合いだと直ぐに分かってしまった。


「遠藤君、かなり酔いが回ったようだね。珠子はもう君の手から離れたんだよ。何年も前に。」

「・・・」

「過去は変えられないんだよ。」


洋介の手が緩むと俊夫は珠子を引き寄せその場から連れ出した。

残された洋介は目の前にあった徳利ごと口へ運んでは一気に飲み干した。
そして、洋介もまた宴会場から出ていった。

ほんの数分の出来事に社員達は大騒ぎだった。


「今のって何なの?!」

「ありゃあ、三角関係だよな?!」

「社長と部長とで遠藤さんの取り合いなの?!」


騒ぎは静まるどころか段々とエスカレートしていった。

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