憂鬱な午後にはラブロマンスを

俊夫は珠子が結婚を承諾してくれたのが余程嬉しかったのか、抱きしめてはキスを繰り返すがそれ以上手を出すことはしなかった。

珠子にはそれが不思議だった。
あれ程のアプローチをしておきながら、何度もキスをしそれ以上の事も今すぐしそうなのに俊夫は手を出さない。

気になったとは言え、珠子からそれを聞けばまるで抱いて欲しいと懇願している様で聞けなかった。
珠子としてはこの方が良いのだと、本当は俊夫が触れてこない事に安心していた。


「珠子、キスしていい?」


珠子は耳を疑った。あれほど何度も無理矢理キスをしていた人が急に珠子にキスのお伺いを立てるのだ。
強引な俊夫なのに結婚を決めた途端に遠慮気味なのは不思議に感じた。


「どうしたの?さっきまでは押さえ込んでまでもキスしてたのに。」

「いや・・・その。あまり無茶なことして嫌われたくないから。」


申し訳なさそうに言う俊夫だが珠子は急にくすぐったくなって笑ってしまった。


「変だわ。さっきまで強引にキスしてたのに。」

「だけど本当に信じられなくて、これでまた君に嫌われたら俺はどうしていいのか分からなくなる。君を幸せにしたいから嫌なことはしたくないんだ。」


さっきまでの強引な人とは思えない程に、嘘のようにとても優しい笑顔の俊夫に珠子は嫌な気持ちはどこかへ吹き飛んでしまったようだ。

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