女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
完全に頭にきていたけど、落ち着いていた。だから彼女の動きはスローで見えた。
玉置がめちゃくちゃに手を振り回して喚きながら暴れるのをお腹にだけは当たらないようにして、もう一発殴っとくかと右手を振り上げる。
と、その手首を強い力で捕まれた。
「・・・もう止めとけ」
いつの間にか、桑谷さんが後ろに立っていた。
「――――――桑谷さん」
「桑谷君!」
女二人は動きを止めた。彼はするりと二人の間に体を割り込ませ、無表情で交互に見下ろした。
私と玉置は荒い呼吸で、全身が乱れた格好で向かい合って立っている。
私は彼に捕まれた手首を振りほどいて、後ろに下がった。
バカ女に色んなところをぶたれていた。制服の乱れを直しながら、既にその存在でこの場を支配している彼を見る。
「・・・何してるんだ?」
低い声で彼が聞いた。
玉置はハッとなった顔で、興奮と腫れで顔を赤くして勢いよく喋りだした。
「この・・・小川さんが私を殴ったのよ!!いきなりよ!?だから応戦しただけよ!」
この腹ボテ女って言おうとしたんだろうな。私は反射的にそう考えた。怒ってる時でも男性の前では‘女’に戻るのね。鼻で嗤ってやる。私は、そんなことは絶対ない。
桑谷さんがこちらを向いた。
「そうなのか?」