女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
「デパ地下の販売員です」
先生は椅子に腰掛けて、うーんと呟いた。
「立ち仕事の上冷えやすい環境だな・・・。まあ、しんどくなったら言いなさい。いつでも診断書は書いてあげるからね」
私ははいと頷く。優しいおじいちゃん先生で、心があったまる。ついに、妊娠も確定したんだ。
家に帰ってから、まずは予告通りに桑谷さんのお母さんに電話をした。
「やりました!」
第一声でそういうと、間をあけて、歓喜の声が携帯から溢れ出した。
「おめでとう!まりさん!あああ・・・どうしましょう!ありがとう、本当にありがとう!」
私はあははと笑う。よかった、喜んでくれたら。また心が温かくなったのを感じた。
「あのー、彼にはまだナイショにするつもりなんです」
「え?どうして?」
「・・・うーん。何と言うか・・・反応が予測出来ないし、私にまだその覚悟がなくて」
お母さんには正直に話す。
お母さんは黙って聞いていて、そうね、と静かに返した。
「判りました。私も黙っておくわ。伝える楽しみは、妻の権利よね」
最後は笑っていた。
私は幸せな気分で電話を切った。
そして、お風呂にゆっくりと浸かる。あたたまって、最近の嫌なことも全部チャラになるような幸福感に包まれていた。
ああ~・・・極楽~・・・。
ゆっくりと丁寧に体を洗い、お気に入りの部屋着を着て好きなものを作って一人で幸せに食べる。
時間は9時をさしていた。