女神は夜明けに囁く~小川まり奮闘記③~
「そうなんです。もうロッカーを開けるのが怖くなってしまって・・・」
困った顔をしてみせる。
「それからは大丈夫なの?」
通りすがりのメーカーの人間が玉置さんに見惚れたのが判った。彼女もそれを知っているようだった。ちらりと後ろを振り返って、その男性に微笑む。
私はそれを、ほお~っと思いながら見ていた。
自覚なく誘惑してんのかしら・・・。そうだとしたら、これはもう天性のものだよね。
この人販売員なんかしてないで銀座でもいけばもっと花開くのでは?
やっと視線が私に戻ったので口を開く。
「ここ何日かはありませんね、ロッカーへの嫌がらせは」
「それは良かったわね」
お互いにニコニコと笑って話した。腹の中では何を考えているのか判らないっていうのではいい勝負だろう。
「では、失礼しますね」
私は会釈をして歩き出す。
彼女が私の後ろから見ているのを感じていた。きっとあの艶やかな笑顔は消えているはずだ。
私はふん、と鼻をならす。
くるならきやがれ、バカ女。
「おめでとう、だね。ちゃんと卵あるよ」
岩井さんというおじいちゃん先生がにこにこしながら言った。
私は微笑んでありがとうございます、と頭を下げる。
「まだまだこれから危ない時期も続くから、もう妊娠しているんだ、という自覚を持つようにね。高いヒールはやめなさい。仕事は何だっけ?」