イジワル同期とスイートライフ
「おい、聞いてた?」

「あ、ごめん、聞いてた。えーと、今回会場もこれまでと違うし、国内もがらっと変えるのはありかも」

「週末どっか行く?」

「えっ?」



久住くんが横から手を伸ばし、私のPCで資料を編集しながら言う。



「俺、今んとこ両方あいてるし」

「あ、そうなの、ええと…」



行きたい、どこでもいいから。

一日同じことをして過ごして、同じ部屋に帰ってごはんを食べて一緒に寝たい。

でも。



「…やめとく、仕事詰まってて、持ち帰っちゃいそうなの」

「そうなのか」



彼がこちらを見た。



「あんま無理すんなよ」



同情するような声で言ってくれる。

ごめん、ほとんど嘘。

一緒にいたら、自分が素直を飛び越えて、わがままを言いださない自信がない。

きっとあきれさせて、くたびれさせる。

想像するだけで怖い。



「WDM終わったら、プライベートでも打ち上げしような」



人目のない瞬間を見計らって、頭をぐいとひとなでしてくれた。

どんな顔をすればいいのかわからなかった。



土日は、本部長をどう説得しようか悶々と考えながら過ごした。

ふと気がつくと、携帯を見てしまう。

久住くんからは、なんの連絡もない。

当然だ、用もないんだから。


ごはんくらい一緒すればよかった。

自分から仕事だと言っておいて、今さら誘えない。

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