イジワル同期とスイートライフ
「乃梨子ちゃん!」

「やったね、六条さん、お手柄、ありがとう!」

「すごかったよー、もう尊敬した。いつの間にあんな海外のこと勉強したの」



動物にするみたいに、幸枝さんが私の頭を抱えてぐりぐりしてくれる。

久住くんがこちらを見ていた。

笑っている。


悔しい。

やられた。





「腑抜けた説得しやがったら、どうしてやろうと思ってたよ」

「しようとしてた…」

「だろ」



久住くんが自動販売機から缶コーヒーを取り、私にくれる。

続いて自分も一本買うと、開けてごつんと私の缶にぶつけた。



「お疲れ」

「ありがと、久住くんもお疲れさま」

「国内の本部長、初めてまともに話したけど、食えないおっさんだな」



あなたも相当なもんだったよ、と言いたいけれど、黙っておく。



「もし私がやる気ないままだったら、自分で説得する気だった?」

「まさか」



販売機一台とゴミ箱がやっと並ぶくらいの、狭いスペースの壁に寄りかかって、久住くんがポケットに手を入れる。



「担当者が後ろ向きな中でやったって絶対うまくいかねーよ。やらされ感丸出しのスピーチなんか、聞かされる身にもなれ。それならやらないほうがましだ」



そういうつもりだったのか。

昂揚で火照った頬をコーヒー缶で冷やしながら、息をついた。

助けられた。

最後の最後で本部長の心をぐっと押してくれたのは、久住くんだ。

自分たちは"英語係"に徹し、スピーチというアイデアの語り手を、私に預けてくれたのも。



「ありがとう、本当に」

「マッサージ一ヶ月分くらいか?」

「…まあ、いいでしょう」

「やった」

「それにしたって、もう少しわかりやすく手を貸してくれてもよかったと思うのね」

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