イジワル同期とスイートライフ
私も久住くんも、絶句した。



「…っていうのは嘘で、かまかけただけなんだけどね、うわ真っ赤」

「なんかおごるから、全部忘れて消えて」

「あ、この栄養ドリンクお願いします」

「高え…」



ドリンクを手に、あからさまな詮索の視線を投げながら吾川くんが去っていく。

本当に行ったのを、廊下に顔を出して確認してから、久住くんがふーっと息をつき、壁にもたれて神妙な声を出した。



「会社はやめよう、もう」

「そうだね、ごめん…」

「いや、俺もだ」



汗かいた。

乾いた喉をコーヒーで潤す私に、物欲しげな視線が刺さる。

あ、もう自分の飲んじゃったんだね。

飲み干す前に譲ってあげると、久住くんは残りを一息であおって缶を捨て、ネクタイを締め直した。



「さ、行こ行こ」



妙に真面目ぶっているのが、笑えて仕方ない。



「私、もう一件打ち合わせだ」

「俺もTV会議」



お疲れ、とねぎらい合いながら、フロアに戻った。

わずかに残るドキドキを、心地よく感じながら。



 * * *


「あっ、決まったんですね、承知です」

「なので修正後のスケジュールで確定で」



須加さんが手帳に書き込みながらうなずいた。

連れてきてくれたのは、テレビや雑誌で名前を見る、もつ鍋のお店だ。

会社の近くにも支店があったらしい、初めて知った。

にぎやかなお座敷が、タペストリーで区切られて、簡易個室になっている。



「須加さん、その恰好?」

「実は今日、もとから休暇をいただいてまして」

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