イジワル同期とスイートライフ
ジャケットスタイルではあるものの、素材もカジュアルで、下はデニムだ。

いつもスーツのイメージが強いので、新鮮。



「でもよく説得されましたね、六条さん」

「半分あきらめかけていたんですが、海外企画に援護してもらえて」

「ああ、久住さんですか」



ぐつぐつと煮え始めた中身を、菜箸で均しながら須加さんが微笑む。



「久住さんはいいですよね、話が早い」

「やっぱりそう思います?」

「そもそも頭のいい方なんだと思いますが、やっぱりちょっと違う文化圏に属している雰囲気をお持ちですよね」



わかるわかる。



「私も前にそう言ったら、怒られて」

「なんでも線を引くな、と?」

「まさにです」



憂鬱だった案件が片づいて気持ちが軽くなっていた私は、まだ一杯目のビールというのに、心地よく酔っていた。

こういうときのお酒が一番おいしい。



「もう久住とけっこうやりとりされてます?」

「そうですね、打ち合わせなんかもさせていただいてますし」

「すみません、本来なら私たちが間に入るべきなのに」

「いや、これも正しい形だと思いますよ、六条さんがしっかり枠を作ってくださっているので、久住さんも動きやすいそうです」

「そんなこと言ってました?」



ええ、とドリンクメニューをこちらに渡してくれる。



「すごくほめてましたね、バカ丁寧で、どこを掘っても穴がない、と」



バカはいらないんじゃないかな久住くん…。

複雑な気分でメニューに目を落とすと、須加さんが「お椀いいですか」と手を出した。



「あ、ありがとうございます」

「微妙な相手って、久住さんですか」



渡そうとした手が止まった。

須加さんは、じっと私を見つめて、動かない私の手からお椀を取る。

< 137 / 205 >

この作品をシェア

pagetop