イジワル同期とスイートライフ
「え?」

「なんか、変じゃないですか、今日の六条さんと…」



久住くんをちらっと指差し、案じるように顔を曇らせる。

さすが、鋭い。


須加さんと飲んだあの日から、もう二週間以上、久住くんとはおかしなまま。

仕事以外での会話は、まったくない。


これまでだって、関係がねじれそうになったことはあった。

でもなんだかんだ、久住くんの強引さに巻き取られるような形で、うやむやになっていた。


ついに彼も、業を煮やしたのかもしれない。

なにも言ってこないし、私にも言わせようとしない。

でも仕事でかかわるときは、さっきみたいに、これまでとなんら変わりない態度で接してくる。


そうじゃなきゃ困るんだけど、そうであっても、困る。

これじゃ、なにをどう切り出せばいいのかわからない。

前みたいにしたい、って、それだけ言ったところで、してるだろ、って言われて終わるような、そんな気がする。


曖昧すぎて、どこにも行けない。

霧の中に立っているみたい。

一歩先は崖かもしれない。



「六条さあん…」



黙り込んでしまった私を、花香さんは心配そうに見ていた。


 * * *


「須加さーん、ホール内にある誘導板、だっせえスペルミスあるよ」

「えっ、失礼しました」



一緒に受付を整えていた須加さんが、慌てて振り返った。

通りすがりに声をかけた久住くんは、私が見えていなかったらしく、気づくと、はっとした表情を見せた。

三人の間に、一瞬、複雑な沈黙が下りる。



「ちょっと僕、確認してきます」

「お願いします」



連れ立ってホールのほうへ行くふたりの背中を見守った。

WDMは、プレ初日とでも言うべきバスツアーを昨日終え、今日、いよいよ会議の第一日目を迎えようとしている。

今日は丸一日会議、明日は午後早めに終了し、夕方からディナーパーティだ。

すべてはこの、都内のホテルで行われる。

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