イジワル同期とスイートライフ
ふう、と吐き出した煙の行方を見つめながら、彼がつぶやく。



「言っちゃなんだけど、めんどくせえなあ…」

「そこを空気悪くしないようにするのが、仕事なんでしょ」

「それとこれとは、まあ、一緒か」



短くなった煙草を灰皿に押しつけ、寄りかかっていた壁から身体を起こした。



「ま、そっちはなんとかするわ、それより今日、寄っていい?」

「いいよ、私、遅くなるから、先に入ってて。後で鍵渡すね」

「えっ…ならいいよ、悪いし」

「別に悪くないけど…」



今さらなにを遠慮しているのか。

久住くんも、無用の気遣いだったことに気づいたようで、「だよな」と気恥ずかしそうにうつむいた。

その視線が、私に戻ってくる。



「あのさ…、先に聞いとくけど」

「あ、終わったよ、大丈夫」

「そう」



ほっとしていることを、隠そうかどうしようか迷っているような、複雑な顔。

淡白な人だとばかり思っていた彼は、知ってみると案外、素直というか、飾り気のない感情を、こうして見せてくれる。

その彼が、うーんと考え込むように腕を組む。



「二回目もあり得るとかってレベルじゃないよな、なんで俺、最近こんな盛ってんだろ」

「まあ、そういうときもあるんじゃない?」

「なんか、ごめんな、つきあわせて」

「…なにに謝られてるのか、よくわからないんだけど」

「だよなあ」



自分にあきれているみたいに、宙を仰いで苦笑する。

ふーん、とその横顔を眺めながら、少し安心した。


結局は彼も、よくわかっていないのだ。

私たちが、なんでこんなことになっているのか。



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