イジワル同期とスイートライフ
「今日、煙草休憩のときに、お話しする機会があったんで」

「…なんて話したんですか」

「そのまんまです。僕が六条さんを誘ってもいいですかって」



なんか、須加さんもけっこう、思いきりがいいというか、変わった人だな。

見た目はどちらかといえば柔らかいのに、人って見かけによらない。



「久住は、なんて…」

「『手を出さないと約束するなら』って」



なにそれ。

ねえ久住くん、なにそれ。



「なので、約束するから誘わせてもらいます、って言ってきました」

「あの…」

「にらまれましたけどね。そんなに嫌ならダメだって言えばいいのにね」



なにそれ…。

須加さんがくすくす笑いながら、私の顔をのぞき込んだ。



「どうですか、一杯つきあってもらえます?」



ねえ、久住くんこそ、なにも言わないよね。

言ったとしても、わかりづらいことばかり。


その約束は、どういう意味なの。

契約が守られないのが嫌なの、それとも別の理由なの。

ダメだって言わなかったのは、どうして。


握りしめた運営マニュアルが、手の中で折れ曲がる音がした。



「すみません、行けません…」



須加さんは愉快そうな目で、どんどん片づいていくホールを見守り。



「まあ、あと一回くらいは誘いますよ」



半分独り言みたいに、そう言った。



終わっちゃった。

家までの道を、キャリーバッグを引いて歩きながら、今頃実感していた。

久住くんとの仕事が、ついに終わってしまった。

今後、連絡を取る理由すら見つからない。

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