イジワル同期とスイートライフ
部屋の前で鍵を取り出すと、小さな鈴がチリチリと鳴る。

花のキーホルダーを見つめた。


久住くん、私、そろそろちょっと、変わりたい。

引っ張ってもらうばかりじゃなくて、自分でも歩きたい。


壊れたら嫌だと思っていた、久住くんと過ごす時間も、もうなくなったし。

だったらこのへんで、思いきってみてもいいかなって。

これも自虐の一種かもしれないけれど、まあ、いいよね。


もしかしたらって、期待する自分もいる。

でも、受け止めてもらえない気も、かなりしている。

気持ち全部伝えたら、こんなはずじゃなかったって思われて、終わってしまうんじゃないかって。

震えるくらい、自信がない。


 * * *


「え…海外?」

「そうだよ、聞いてないの?」



吾川くんが目を丸くした。

WDMが終わって一週間、社内でまったく久住くんを見かけないと思ったら、また出張に出ているらしい。



「どこに?」

「えーと、確か今度もアジアのどこかだったと」



宣伝課の席は、みんな忙しいのでいつ来ても人がまばらだ。

偶然にも会えた吾川くんに、WDMの報告書を渡した。



「はい、参考までに」

「おー、ありがとう、課内で展開するよ。どうだった、海外との合同開催?」

「海外企画に助けられっぱなしで、成功」

「最近、うちのCM、海外の特約店が作ってるやつのほうがいいってあちこちで書かれちゃっててさあ、参ってるんだよね」

「私も聞いた。宣伝課長が怒り心頭って」

「あれも久住たちのとこで制作ガイドライン作ってるんだよ、確か」



それでブランディングの勉強とかもしていたのか。

もう本当に、必要なことはなんでもやるって感じなんだな。

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