イジワル同期とスイートライフ
「あいつに消えてもらえば、海外のレベル下がったりしないかな」

「やめてあげて」

「だって最近、本部長がいきなり、海外営業から学べとか言いだしてさ」



えっ。

吾川くんが頬をふくらませる。



「これまでの"打倒海外"もどうなのよって思ってたけど、いざ学べと言われると、久住の顔が浮かんで面白くないわけ」



あんまり正直に言うので笑ってしまった。

わからないでもない。



「俺、あいつのフライトプランもらってるから、後で送るよ」

「ありがとう」

「いちゃいちゃしてたくせに、なんでそんなのも知らないの」



聞こえなかったふりをして逃げた。

本当に、なんでそんなのも知らないんだろう。

国内ならまだしも、海外出張なら、ひと声くらいかけてくれたっていいじゃないか。

確かにもう、久住くんがどこへ行こうが、私の仕事には関係ないけれど。

彼にとって私は、もう、その程度になってしまったんだろうか。


席に戻ると、吾川くんからメールが来ていた。

久住くんのフライトプランと出張スケジュール。

WDMの終わった翌日の夜には、もう旅立っていたことになる。


ねえ、久住くんこそ、契約違反なんじゃないの。

彼氏として振る舞うっていうあれは、どこへ行ったの。


私たちが今やっているのって、なんなの。

もとからいびつな関係だった私たちは、ケンカすらまともにできない。

せっかく出せそうだった勇気が、また散ってしまいそうだよ。



久住くんの旅程を、自分の携帯に入れるなどというひまなことをしてみた。

今日、最後の視察をして、夜に現地を出る。

明日の朝には東京の空港に着いて、一日代休扱いでそのまま直帰。


ベッドで見るともなしにそれを眺めて、あれこれ想像した。


まだ仕事中だろうか。

今日はなにを食べたんだろう。

泊まっている部屋からは、なにが見えるんだろう。

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