イジワル同期とスイートライフ
これには腹が立って、ドンと向こうの胸を叩くと、楽しげな笑い声と一緒にぎゅっと抱きしめられた。



「嘘だよ」

「嘘?」

「ふざけんなって言ったよ。だからあっち気にすんなよ?」



からかうように、腕の中の私を見る。

自然とお互い顔を寄せて、キスをした。

冷めきらない酔いも手伝って、とろとろとまどろむようなキス。



「ところで、そろそろ待ってんだけどな」

「来ると思った…」



私の顎に指を添えて、にやにやと嫌な笑みを浮かべる。



「偉そうに人に言わせてばっかりで、自分はいつになったら言ってくれんのかね、乃梨子さんは」



顔を見られたくなくて、胸に額をくっつけた。

そうなのだ、私は結局、いまだに言えていないのだ。

好き、と。


あのとき言ったじゃないか、と私としては主張したいんだけれど。

『あれで言ったつもりかよ』と鼻で笑われると、確かにそうかもしれないと思わなくもなく。



「そのうちに…」

「おーい、やればできる子じゃなかったのかよ」



ほんと頭来る、この人。

けれど今は機嫌がいいのか、それ以上しつこくはせず、代わりに柔らかいキスをくれた。

身体に回された手が、明確な意図を持って肌の上を這いはじめる。

久住くんが"女子素材"と呼ぶ、ふわふわのカーディガンが肩から落ちる。

シャツのボタンを外しながら、彼が困ったように吹き出した。



「緊張する」

「またそれ」



好きだと言わされてから、久住くんは私に触れるたびそう言う。

どうやら、本当に緊張してしまって仕方ないらしい。



「笑うなよ、真面目にやってんだから」

「笑ってないよ」

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