イジワル同期とスイートライフ
なんだろう、今の"間"はなにか、危なかった。

反すうするのも恥ずかしいけれど、『好きだよ』とか言われるような気がした。


いったいどうしてそんなバカなこと考えたんだろう。

だってその前のやりとりが、まるで本当の恋人同士みたいで。

途中から、久住くんの声が急に親しげに、甘くなったように聞こえて。

沈黙の中に彼の吐息を感じた気がして。


『待ってる』なんて、なにを思って言ったのか。

いやでも、ただの同僚だったとしても、あそこであれを言うのは別に間違いじゃないんじゃない?

もうなにが正解なのか、わからない。


周囲に人がいないのをさいわい、顔を覆って天井を仰いだ。

そもそも、あんなことくらいで電話なんてしてこないでよ。

海外にいるくせに。

しばらく聞くことはできないと思っていた声が、急に聞こえてくるのって、心臓に悪い。


ああもう、なにが起こってるんだろう。

どうしちゃったの、私。



家に帰ると、久住くんの匂いが残っていて、ぎくっとした。

特に禁止もしなかったんだけれど、彼はここでは煙草を吸わない。

ベランダでも吸わずにいてくれて、どうしても吸いたくなったときには近所の喫茶店に行っていた。


前の彼女が、そういうのにうるさかったのかな、なんて邪推する私は、下世話なんだろうか。

久住くんから見た私にも、そんなふうに誰かの影響が透けていたりするんだろうか。

そんなものに、特に興味もないだろうか。


この一週間ちょっとの間に、帰ってからもシャワーを浴びるくせがついた。

それは毎日のように久住くんに抱かれるからであり、そういうときの彼が、すごく丁寧に全身に触れてくるからである。

お互いの存在に慣れてきてからも、それが雑になることはなかった。

わざと意地悪をしたり、奇襲をかけてきたりすることはあっても、基本的には久住くんの愛し方は、きめ細やかで手抜きがない。


もとからそうなんだろうか。

それとも、私がそうされたいと思っているのを、感じ取っているんだろうか。

疑問ばかり。


一番強く彼の気配が残っているのは、やっぱりベッドだ。

枕に頭を載せると、強烈にそれを感じて、どうにも眠りづらくて弱った。



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