イジワル同期とスイートライフ
「床に線があったら並ぶ、という人ばかりじゃないんです。想像以上に自由です。営業部員のアテンドはつけますが、全員にとって初めてである今回は、大げさなくらいの手を打っておきたい」

「…なるほどですね」



タイムテーブルと見取り図を見比べながら、花香さんはふむふむとうなずき、隣の須加さんに声をかけた。



「でしたら会議本体の受付も同じことですね、こちらでやり方を決めたら、そちらにも反映できるようマニュアル化しちゃいましょう」

「了解、うちのほうが場所的にも日程的にも、対応は簡単だと思う」

「アテンドの方々を統括していただけるのは…」

「私がやります」



久住くんがうなずく。



「でしたら、こういうのはいかがですか、市場別に…」



ふたりのやりとりに、さっきの言い争いの名残はない。

よく考えたら、彼らも互いが仕事しているところを見るのは、初めてのはずだ。

時折目を合わせながら、相手の話に耳を澄ましている。

そんな様子は、私の胸を少しだけ、ざわつかせた。





「あ」



夜、テレビで、観たかった映画の予告をやっていた。

まずい、もう公開していたのか。

派手な作品ではないので、早く観ないと終わってしまう。



「週末、観に行く?」



背後のベッドから声がする。

振り返ると、寝そべって本を読んでいた久住くんがこちらを見ていた。



「明日は土曜出勤の日だよ、出るでしょ?」

「日曜でいいじゃん」

「でも、引っ越しの準備したいって」

「半日あれば十分だよ」

「じゃあその分、手伝いに行こうか」

「マジで? あー…いや」

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