イジワル同期とスイートライフ
目を泳がせてから、「やっぱりいい」ときっぱり言う。



「見られたくないものでもあるの」

「そりゃ、男なら誰だってあるだろ」

「別に気にしないよ」

「俺がするんだよ」

「DVD派?」

「どこで覚えた、そんな下品な詮索」



急に分別臭い口調で叱られ、笑ってしまう。



「なに読んでるの」

「ブランディングの事例集だよ、お前も読む?」



言いながら奥に詰めてくれるので、私もベッドに上がる。

隣にうつぶせて、彼の開いている大判の本を覗くと、ちょうど私たちの競合であるメーカーの事例が載っていた。



「こういうの、海外の事例を勉強できる本って、なかなかないんだよなあ」

「むしろ現地で書かれてたりしないの」

「あ、そうか!」



なぜか今まで思いつかなかったらしく、さっそく携帯を取り出すと、いそいそと誰かにメールを書きはじめる。



「駐在さんに頼んで、送ってもらおう」

「そういえば向井さんて、来週いっぱい?」

「そうだ、行く前にお前と飲みたいって言われてたんだった。設定していい?」

「ほんと? 楽しみにしてる」

「六条、もっとうちのフロア来ればいいのに。今のうちに顔売っとけよ」



いやいや、行きづらいよさすがに。

WDMの仕事を始めてから、用がなくはないんだけど、相手が久住くんということもあって、電話で済ませたり呼び出したりしてしまうことのほうが多い。



「今回はたまたま俺が担当したからよかったけど、そうじゃなかったら厳しかったろ。今後のためにもさ」

「うーん、うん…」

「俺の出張中に、席来たんだろ、すげえ噂になってた」

「え、なんで!?」

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