イジワル同期とスイートライフ
それまで毎日のようだったのがいきなり減ったら、なにかと思うじゃない。

そういえば、いつが境い目だったろう。

久住くんの出張あたりだろうか。



「そのくらいなら、普通だろ」



言い聞かせるように、私の頬をなでる。

うん、確かに普通なんだけどね。

でも、普通でいいんだっけ、私たち?


ゆっくりと、久住くんの温かい手が私を溶かす。

このまま眠ってしまいたいほど、穏やかな感覚。

全然意地悪でもないね。

こんなこともできるんだね。


ああこれ、まずいなあ。

汗で湿った背中に、ぎゅっと抱きついたとき、幸せというのか喜びというのか、そんなようなものが身体から溢れ出そうになった。

まずい。

私、この人のこと本当に好きだ。

抱きしめられただけで泣きたくなるんだから、相当だ。


でも、なのか、だからこそ、なのか。

きっと明日からまた、不安を数える日々。


 * * *


受付フロアの廊下を歩いていたら、私の名前が聞こえた気がした。

声をたどって給湯コーナーを覗くと、ふたつの人影がある。

ひとりは片手にコーヒーを持ち、片手をポケットに入れている久住くんで、向かい合わせにこちらに背中を向けているのは…花香さんだ。

久住くんが私に気づいて、ちょっとカップを掲げてみせた。



「あっ、六条さん、ちょうどよかったです、お届け物に来ちゃいました」



振り返った花香さんが笑顔になる。



「いらっしゃらなかったら受付にお預けしようと思ってたんですが」

「わ、ありがとうございます。今ちょうど席に戻るところなので、いただきます」

「恐れ入ります」



社名の入った封筒を受け取り、中を見た。

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