イジワル同期とスイートライフ
「当日のガイドマップです。最終的には多言語化したいということでしたので、早めに内容を固めてしまおうかと」

「うわあ、助かります」



花香さんが、でへへえ、みたいな変な笑い方をしたのでぎょっとすると、久住くんがカップを持った手で、ぞんざいに彼女を指さした。



「こいつ、六条のことが好きなんだと」

「えっ?」

「ちょっと、やめてよウフフ」



花香さんがにこにこしながら、顔中ピンク色になって久住くんをばしばし叩く。



「痛えよ」

「あの、六条さんすみません、お気になさらず」

「自分がこんなだからさ、お前みたいに落ち着いててきれいなタイプ、憧れなんだよ、昔から」



キャーと恥ずかしがりながら、小柄な身体が足踏みで弾んだ。



「あのっ、こんな男とご同期とか、さぞうんざりかと思いますが、私のことはどうか嫌いにならないでください」

「お前に言われたくねえよ、自己中女」

「は? ごめん聞こえない」

「頭来るわマジで…」

「六条さん、もし30分ほどお時間よろしければ、マップについてご説明させていただいてもよろしいですか」

「あ、はい、大丈夫です」

「賢児も?」

「いいよ、じゃあPC取ってくる」



カップを捨てて、久住くんが階段のほうに向かう。

その背中に声をかけた。



「商談ブースにいるよ」

「ん、先始めといて」



受付の横にある、パーテーションで仕切られたブースのひとつに入ると、花香さんが席に着きながら、なにやら悪い笑みを浮かべた。



「いやあ、あの男も六条さんのこと、かなり好きですね」



一瞬意味がわからなかった。

< 98 / 205 >

この作品をシェア

pagetop