人間嫌いの小説家の嘘と本当
「侑李、待ってるだろうな」
冷房が効いたバスの一番後ろの窓際の席に座り、鼻歌交じりに窓の外を眺めた。
膝の上に置いた甘い香りを漂わせる菓子箱。
その中には、期間限定のマンゴーと生クリームのシュークリームが入っている。
彼の喜ぶ顔が目に浮かんで頬が緩む。
不思議。三ヶ月足らずしか住んでいないのに、いつの間にかあの家が私の居場所になっている。
侑李や櫻井さんがいるあの家が、私が帰る場所――。
窓の外に見える、移り行く景色を見ながら椅子に体を預けた。
ふと空を見上げると、さっきまでギラギラと輝いていた太陽に影が差し、どんよりとした黒い雲が空に広がり始めた。
「うわ、雨が降るかも。傘持ってきてないのに、最悪」
暫くして、バスの窓にポツポツと雫が斜めに張り付き始める。
それは次第にバケツをひっくり返したような大雨と化し、外では店の軒下に避難する人や、カバンを頭に乗せ走っていく人が視界に入った。
ゲリラ豪雨か……すぐに止めばいいけど――。