人間嫌いの小説家の嘘と本当
ホッとしたのも束の間、真幸に手首を掴まれ同時に席を立つ。
拍子に、膝に置いていたシュークリームの入った箱がグシャと音を立て、その場に落ちてしまった。
あ……侑李のシュークリームが――
拾おうと後ろに手を伸ばすけれど、真幸が手を引く力が思いのほか強くて引き返せない。
後ろ髪を引かれながらも、彼の後を追うようにバスを降りると、人気の無い道を選びながら細い裏路地へと向かった。
「ちょっと、真幸。何の目的で、こんな事するの?」
「目的なんて無いさ。俺はただ、お前を迎えに来ただけだ」
真幸は歩みを止めることなく、素っ気なく言い返すと再び前を向いてしまう。
迎えって、この前決着はついたでしょう?
私とあなたは、もう終わってるのに――。
それからは二人とも言葉を交わすことなく、私はただ真幸が行く先についていくしかなかった。
その間も、ずっと私の手首を握ったまま放そうとはしない。
何処へ行こうとしているのか、迷いなく足を進めていく彼。
けれど自分が悪いことをしているという自覚があるのか、何かを警戒するように何度も辺りキョロキョロ見回して確認している。