人間嫌いの小説家の嘘と本当
雨は止んだものの、陽は完全に落ち街灯が灯り始める中、私たちは闇に紛れるように道を選びながら、ある建物へと辿り着いた。
そこは何年も使われていないと思われる廃工場。
鉄サビや油や埃が入り混じった、何とも言いようの無い重い空気が漂い思わず鼻を覆い顔を顰める。
でも、ここなら誰にも迷惑を掛けることなく闘える。
私は真幸の隙をついて、銃を握っている右手を捻り後ろへと回った。
「うっ……涼花。なんで――」
居をつかれたのか、抵抗する暇なく眉を顰め痛みに耐える真幸。
――形勢逆転――
武道の心得がない真幸は、私に抵抗することなんて出来ない。
「それは私が言いたいわよ。銃まで手に入れて、どうするつもりだったの?」
「別に……俺は、お前と一緒に、居たかっただけ、だ。お前も、そうだろう?」
真幸は後ろ手にされた腕が痛むのか、途切れ途切れに言葉を紡ぎ、力のない声で俯いたまま答えた。
そんな彼に私は苛立ちを覚え後ろ手に回した彼の腕に力を込める。
「良く言うわよ。真幸、あなた私になんて言ったか覚えてる?別の女に子供が出来たから別れろって言ったのよ?あなたが家に帰ってきた時、私がいて欲しいからって会社も辞めたのに――」