人間嫌いの小説家の嘘と本当
くぐもった男の声。
男の顔を見ようとしたが、それは叶わなかった。
何かが私の頭の上に振り下ろされ、スローモーションのように視界に入る。
庇おうと手を上げるも間に合わず、後頭部に鈍い痛みが走り、そのまま地面に倒れ込んだ。
「涼花!なんでこんなこと、どうして」
茫然と向かい合う誰かに声を掛ける真幸。
驚きの余り、涙は止まっているようだ。
「だ、れ……」
薄れゆく意識の中、どうにかして男の顔を見ようと頭を動かす。
けれど視界がぼやけて上手くピントが合わない。
「厄介な、お嬢さんだ。けど、あんたにはアイツを呼ぶための最高の餌。利用させてもらう」
「うっ……」
男が私の髪を掴み顔の傍まで持ち上げる。
後頭部の殴られた痛みなのか、髪を掴まれた痛みなのか分からない。
痺れたような痛みが全身を貫き、呻き声だけが口から洩れた。