クリスマスプレゼントは王子さま






レン王子に“恋人になれ”と提案されたのは、つい昨日のこと。


一瞬固まった私だけど、硬直が解ければ思考は戻る。最初は悪い冗談かジョークとしか思えなくて、私は笑って軽く受け流そうとした。


「は、はは……いきなり何をおっしゃってます? 私が恋人だとか……ジョークにしても質が悪いですよ」

「本気だ」

「え……」


この時、不覚にもレン王子を見てドキッと心臓が跳ねた。


まっすぐ私に向けられていた王子の琥珀色の瞳は、あくまでも真摯で嘘偽りのない光を宿しているような。そんな気がして。


今の今まで何の感情も感じさせなかった彼の、人間らしい反応に。急に彼が男性だったことを思い出してどぎまぎした。


(え……嘘。本当に彼は私を恋人にしたいの? し、信じられない。でも……嘘をついてるふうにも見えないし。まさか一目惚れとか……いやいや、あり得ない! それこそ天地がひっくり返ったって。こんな色気がない地味でがさつな私が……男より男前と言われてきた私が。後輩から必ず姉御とか姉貴と呼ばれる男前な私が。今まで女性扱いされたことがない私が。
Gの退治は必ず任される私が。
あ、いかん。自分をけなし過ぎて落ち込んできた)


自虐ネタを頭の中でくり広げて肩を落としてどんよりする私に、レン王子は非情なひと言をおっしゃいました。


「本当の恋人ではなく、偽を演じてもらう。そもそもオレにそういった者は要らないが、今はその存在を利用する必要がある」


< 26 / 124 >

この作品をシェア

pagetop