クリスマスプレゼントは王子さま



「翠様、この書類ですが……」


本社ビルにレン王子に続いて入ろうとした時、間宮さんが書類を見せるふりをして耳打ちしてきた。


「翠様、どうも様子がおかしいです。決して私から離れないでください」

「えっ……」


思わず彼女の顔を見れば、口元に指を当てて黙ってというゼスチャーに、思わずコクコクと頷いた。


「わ、わかりました……アドバイス通りにしますね」


何とかそれだけを返して距離を置きながら本社ビルへ向かう。


(私になにか危険があるの? ううん、こんな地味な私を狙ったって何の意味もない。だから大丈夫……だよね?)


私なんてそんな大それた存在ではないから、命を狙うなんて手間も時間も惜しいし無意味過ぎる。


第一、この会社は日本でもかなりの大手で有名なのだし。そんな会社の本社ビルで何かが起きるとは思えなかった。


それでも、今までにないほどに間宮さんが緊張をみなぎらせているのを見てると、こちらまでが落ち着かない気分になってくる。


「落ち着いて……大丈夫、大丈夫。なにもない」


自分に言い聞かせる為に、小さく小さく呟いた。


本社ビルの上層階に向かうため、直通のエレベーターに乗る話になったらしいけど。何だか妙な胸騒ぎがして、無理にレン王子と同じエレベーターに乗り込んだ。


(まさかね……こんな場所でレン王子を狙うなんて。下手したら国際問題になるはずだし)


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