クリスマスプレゼントは王子さま
それに、護衛がこれだけたくさんいるのに……と考えていたのだけど。それが甘いと思い知らされたのがすぐだった。
特定の階に直通するエレベーターは目的の階に到着したにも関わらず、ドアが開かない。
「おい、どうして開かないんだ?」
レン王子の護衛である皐月さんがドアを叩くけど、間宮さんがハッと上を見て咄嗟に私にハンカチを渡してきた。
「……翠様、これで鼻と口を覆って。身体を低くしてください!」
「は、はい」
もしかすると火事でもあったんだろうか? と不安になって渡されたハンカチで口元と鼻を覆う。すると、ほどなくしてエレベーターの室内に白い煙が入り込んできた。
「これは……催眠ガスか」
舌打ちをした皐月さんがエレベーターの天井を見上げる。
私は間宮さんに守られる形で、動かないでくださいとのアドバイス通りにしてた。
「どうやらこの会社もアホ王子側に抱き込まれたみたいね」
次々と護衛が倒れるなか、アベルさんは退屈そうにあくびをしながらそうのたまう。
「アホ王子?」
「第一王子という高貴なご身分のお方だよ……っと」
突然、照明が落ちて密室が真っ暗になった。
「あらら~ここまでしてくれるかな。となれば次はお決まりのコースだねえ」
のんきなアベルさんにレン王子の指示する声が聞こえてきた。
「アベル、ありったけのライトを出せ」
「はいはい、っと……来たね!」
ポン、とドアが開いた瞬間――入ってきたのは。手に銃を持ったスーツ姿の人間だった。