クリスマスプレゼントは王子さま



それに、護衛がこれだけたくさんいるのに……と考えていたのだけど。それが甘いと思い知らされたのがすぐだった。


特定の階に直通するエレベーターは目的の階に到着したにも関わらず、ドアが開かない。


「おい、どうして開かないんだ?」


レン王子の護衛である皐月さんがドアを叩くけど、間宮さんがハッと上を見て咄嗟に私にハンカチを渡してきた。


「……翠様、これで鼻と口を覆って。身体を低くしてください!」

「は、はい」


もしかすると火事でもあったんだろうか? と不安になって渡されたハンカチで口元と鼻を覆う。すると、ほどなくしてエレベーターの室内に白い煙が入り込んできた。


「これは……催眠ガスか」


舌打ちをした皐月さんがエレベーターの天井を見上げる。


私は間宮さんに守られる形で、動かないでくださいとのアドバイス通りにしてた。


「どうやらこの会社もアホ王子側に抱き込まれたみたいね」


次々と護衛が倒れるなか、アベルさんは退屈そうにあくびをしながらそうのたまう。


「アホ王子?」

「第一王子という高貴なご身分のお方だよ……っと」


突然、照明が落ちて密室が真っ暗になった。


「あらら~ここまでしてくれるかな。となれば次はお決まりのコースだねえ」


のんきなアベルさんにレン王子の指示する声が聞こえてきた。


「アベル、ありったけのライトを出せ」

「はいはい、っと……来たね!」


ポン、とドアが開いた瞬間――入ってきたのは。手に銃を持ったスーツ姿の人間だった。



< 69 / 124 >

この作品をシェア

pagetop