クリスマスプレゼントは王子さま
「ああ、さっぱりしたものも箸休めになるからね。海くん、こっちに来てじゃがいもの皮を剥いておくれ」
房江おばあちゃんがそう言うと、ソファでぶらぶらしてた海は不満そうに口を尖らせた。
「え~なんでぼくが……」
「お料理ができると将来好きな女の子に見直してもらえるよ」
おばあちゃんがそんな事を言うと、急に海の頬がパッと赤く染まった。
(わ、もしかして海って好きな子がいるの?)
まだまだやんちゃで子どもだと思っていた弟なだけに、その反応は意外や意外。同年代の女の子がそろそろおしゃれに目覚める年頃だけど、男の子はただふざけて遊んでいれば満足と思ってたけれど。知らないところで確実に成長してるんだな……と感慨深いと同時に、ちょっと寂しくなった。
(そっかぁ……海はもう初恋をしてるんだ。ちゃんと男の子として成長してるんだな。翼は何も言わないけど、恋の一つくらいは経験しててもおかしくないよね)
まだまだ小学生は子どもと思ってた。だけど、弟達は確実に大きくなって、自分が知らない世界を築いてる。
何もかも頼られた10年前とは違う。
あと10年経ったらみんな二十歳を過ぎてる。それぞれ独立してもおかしくないんだな……。ついついそんな先のことを考えてしまい、一気に気分が落ち込んだ。
10年先。翼は22で大学生か……もしかして結婚して家庭を持ってるかもしれない。
その時私は34、5……。
独りぼっちになっていてもおかしくない。
(耐えられる? ううん……弟たちのしあわせを願うなら我慢しなきゃ。いつまでも一緒にいられないのは解りきったことだったんだから)
私自身は子どもを持たなくていい。弟たちのしあわせを楽しみにして余生を生きよう。