結婚ラプソディ
「お兄さんってあんなに毒舌だった?」

帰りの車内でハルは聞く。

「うん。
結構言うかな」

病院でもキワドイ事を言っているのを見た事がある。

僕に対しては結構な頻度で言うね。

「まあ兄さんはそれくらいでいてもらわないとね」

言って良い事と悪い事を弁えてるし。
毒舌じゃないと勝てない親戚もいるからね。

「…透もそういう所、あるよね」

それは…

「挑発されてるのかな、僕」

チラッとハルを見ると何やら慌ててる。

「はーるー」

わざと呼んでみる。

「透!私は何も挑発なんてしていないし」

この狭い車内で逃げようとしている。

「逃げられないよ」

ちょうど信号に引っ掛かり、ブレーキを踏んだ。

その瞬間、ハルの手を握りしめる。

「あわわわ!!!」

…何故、そんなに慌てるの。
たかが手を握ったくらいで。

「ハルは何か変な想像でもしてるのかな。
…じゃあ、続きは家で、だね」

「えー!」

ハル。顔が赤いよ。
どうしてそんなに照れてるの?
今更、照れるような関係でもないのに。

そう思うけど実は僕もそんな所はある。

ハルよりは照れないけど。

信号が変わり、僕は手を離した。



今日は兄さんの言う通りにしよう。
家に着いたハルは明らかに疲れている。

休暇に入ってから毎日一緒に食事を取ったり、お風呂に入ったり、普段出来ない事をしているからか、今まで気が付かなかったハルの表情を読み取れるようになっていた。

裏を返せば今まで全くハルの事をわかっていなかったのだ。



「電気消すよ」

時計を見ると午後10時過ぎ。

僕がそう言うとハルは頷く。

早々にお風呂に入って、こんな時間に寝るだけの為に布団の中にいるというのはハルと一緒に住み始めて初めての事。

電気を消して横になる。
…薄明かりの室内。
僕はあまり好きではなかった。
一人の時はその静けさと闇に潰されそうだったから。

ハルといると…

それもまた違った感覚に陥る。

寝ているハルをそっと背中側から抱きしめた。
< 26 / 90 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop