結婚ラプソディ
7.普段の日々に

☆ 高石 ハル ☆

透と水間さんが家に帰ってきたのは夜中0時半過ぎ。
思ったよりは早く帰ってきた。

「おかえり」

玄関が開く音が聞こえたので声を掛ける。

「ただいま」

透はニッコリとほほ笑んだ。
大部飲んでいるはずなのに全然顔に出ていなかった。

「お邪魔します」

水間さんは申し訳なさそうに頭を下げる。
私は首を横に振り、

「いえいえ、こちらこそ今日はありがとうございました」

そしてチラッとロフトを見る。

ナツは疲れ果てて寝てしまった。

「少し前までは起きていたのですが」

「そうですか」

水間さんもチラッと上を見る。
かすかにナツの寝息が聞こえた。

「お風呂、入る?」

透が水間さんに聞くと

「うん、ありがとう、借りるわ」

「お先にどうぞ」

そういうと透はクローゼットからタオルを取り出す。

「ありがとう」

水間さんはナツが用意していた自分の着替えをバッグから出すと浴室へ向かった。

それを見送ると透は大きく深呼吸をしてシャツのボタンを緩めた。

「ハル、今日はお疲れ様」

そう言って私を抱き寄せる。
少しだけ…アルコールの臭いが…。

「透もお疲れ様。
…ところで、どれくらい飲んでるの?」

私は思わず、両手で透の頬をムニムニ、と触った。

「…さあ。
でも、まだ飲めるよ」

「もう飲まなくていいから」

それ以上、アルコールの臭いを嗅いだら私が吐くわよ。

「ハル、今日はなっちゃんと一緒に寝る?」

私は首を横に振って

「ナツの隣には水間さんでしょ。
私は透の隣でいい」

とはいうものの。
布団を敷ける場所はソファーの隣。
しかもシングル1つ分くらい。

「ま、いっか。
ここで二人、抱き合って寝よう」

透が何だかうれしそうに言う。

そんな透を見ると凄く嬉しい。
普段、仕事をしていると中々こういう表情を見せてはくれない。
家でもどことなく緊張しているのがわかるくらい、オンコールに備えている。

でも、それも明日まで。
この数日、色々あったけれど、透の穏やかな表情を見ることが出来て良かった。
ただ、次にそれを見ることがあるのかな。
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