ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「もう、随分前のことになるけど」

10年ほどのになるだろうか。一日、買い付けで工房を留守にしていた日。

夜遅くに帰ると、鍵を閉めていたはずの室内にこの傘が置いてあったそうだ。

確か、あの窓の下あたりに。そう言ってお姉さんが指差した窓からは夕日が射し込んでいた。

「お客さんの忘れ物に気づかなかったのかな、とその時は思ったけれど。やっぱり不思議でね。なんとなく処分できなくて」

涙をティッシュで拭う。

「ハルは……春太さんは、きっと、お姉さんに会いにここへ来た、んだと思います」

私と別れた後、いったいどんな思いで。

「……きっと、そうね」

お姉さんもそっと目頭をおさえる。
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