欲情プール
何も要らない…

一生に一度でいいからっ、本当の我儘が許されるのなら…


欲しいのは茉歩だけだ。


茉歩さえ側にいてくれればそれでよかったのにっ…

俺を取り巻くしがらみは、そのひとつですら許してくれなくて。


愛を伝えたかったこの口で、傷付ける事しか出来なかった。

抱きしめたかっただけなのに、潰す事しか出来なかった。


こんな俺なんか…

俺の人生なんか、もうどうでもいい。




投げやりになって、ただひたすら苦しみの渦に溺れてると…


「無茶する君を、僕が煽る訳にはいかないと思ってたけど…
ちょっと、聞いてくれるかな?」

いつもは見守ってくれてる椎名が、見兼ねてか口を挟んできた。


「あの日、彼女は退職を選んだけど…

それどころじゃないだろうに、しっかりと業務の引き継ぎをしてくれてね。

驚いた事に、スケジュール管理ひとつ取っても…
僕でも頭が下がるくらい、君がやりやすいように組まれてたり。
そのひとつにひとつに、君を思いやる補足が付け加えられたり。

彼女は心の底から、君を、君の人生を、大事に思ってたんじゃないのかな。

きっと、慧剛くんのために身を引いたんだと思うよ?」
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