欲情プール
具合でも悪いのかと、俺は不安どころじゃなくなって。


「大丈夫ですか?」

咄嗟にそう声掛けると。


一瞬の間を空けて、バッと顔を上げた茉歩と目が合って。

心臓が止まりそうになる。


「あ、俺…
こーゆう者です」

腑甲斐ないほど動揺した俺は、思わず。
茉歩が守ろうとしてくれた目的を、ちゃんと成し遂げたと示すように…
社長の肩書きが記された名刺を差し出すと。

不意に、俺たちが始まった職安でのやり取りがデジャヴする。


茉歩…
今度こそ、ここからちゃんと始めさせてくれ。

まだ赦してくれるのかさえわからないけど、言い訳を並べるつもりはなくて。


「あの。ナンパ男の我儘だと思って、聞いて下さい」

敢えてナンパを装ったのは…
茉歩が怒りやすいように、気兼ねなく断れるように、俺の気持ちが負担にならないようにするためで。


「前に婚約者が居たんだけど、上手く破棄されるように持って行って。
それからはフリーなんだけど、こんな肉食面して片思い歴3年です。

それで、良かったら俺の…
人生の相棒に、なってもらえませんか?」

覚悟を決めて、そんなプロポーズともいえる言葉を投げかけた。
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