スノー アンド アプリコット
なんなの。こいつは、誰なの?
あたしは息も絶え絶えになりながら思う。
下から見上げるユキの快感で歪んだ顔は、凄絶な色気を纏っていた。
まるで知らない男だ。あたしは、こんなユキを知らない。
だけどそんな思考もドロドロになって、何もかもどうでもよくなっていく。
「…ぁあっ、あ…」
凶暴に突き上げられながら、あたしはただただ快楽に呑み込まれて、悶えて、喘ぐ。気持ちいい。嫌だ。気持ちいい。気持ちいい、気持ちいい…
助けて。
あたしを助けてくれる人なんかこの世に居ない。いるわけもない誰かにあたしは心の中で叫んだ。
助けて。
嫌だ。
溺れたくない…
「杏奈、好きだ。」
深くそれを埋めて、奥に押しつけながら艶かしく腰を動かし、ユキが呻いて、あたしの頭を抱え込む。
だめだ。
あたしの身体は勝手にユキの動きに呼応し始めている。
「お前は、俺のだ…」
そんな不本意なセリフまでが官能的に響く。
意志を掻き集めて、なんとかして嫌だと言おうとする唇を、荒々しく塞がれた。
思うままにあたしの身体をいたぶって、嘲笑ったユキはもういなかった。もはやユキにも余裕はなかった。あたしたちは互いに、切羽詰まっていた。
いつからか、身体が貪欲にユキを求めてうねり出している。ユキが喘いだ。おさえられないほど興奮した。
もう耐えきれなかった。あたしは自由になっている両腕を上げて、ユキにしがみつき、肌を擦り合わせた。ユキがそれに応えて、あたしを固く抱きしめる。汗ばんだ肌が密着して、どちらからともなく甘い吐息が漏れた。
あたしが意志を手放して欲求に従ってしまえば、もうあとは豪流に乗ったように、あたしたちは、蠢く一つの塊になった。
下僕もプライドも、何もなかった。ここにはただ、絡まり合う男女だけがいた。