スノー アンド アプリコット


「何したのか…って、ああ。」

ユキは頬をさすりながら頷いた。

「ああ、ってなんなのよ、あたしを好き放題にしておいて、その気の抜けた返事は!」
「良かったくせに。」
「……っ!!」

ーー悪魔!!
あたしはとっさに言葉に詰まった。悔しい。悔しい!!

朝になってしおらしい態度に戻っていれば水に流してやろうかとも思ったけど、その可能性はないみたいだ。
もう知らない、こんな奴。
あたしはベッドを降りて、服を着て、スタスタとこの部屋を出ていこうとした、のだけれど。

「あ…」

足を踏み出そうとした途端、あたしはくにゃっと崩れていた。一歩も歩けず、床にぺたりと座り込んだ。
あれ…?

「大丈夫か。」

ユキがベッドから降りてあたしを軽々と抱え上げ、ベッドに逆戻りさせた。
足腰に力が入らない。

「あんだけやりゃ、まあそうなるわ。」

ユキが私の服をこっちに放ってよこし、自分もボクサーパンツを履きながら、涼しい顔をして言う。
あんだけやりゃ、って。

「誰のせいでっ…」
「俺だよ。」

ぞっとするほど剣呑な声で遮られた。昨日の夜を呼び起こすような声色だった。

ぐん、と後頭部の髪の毛をまとめて根本から掴まれた。

「いった…! あんたねえっ!」
「なかったことにしようとか思ってんじゃねえぞ。」

触れるほど近くにあたしの顔を引き寄せて、ユキは真っ直ぐに見つめてきた。

「お前は俺に抱かれてよがって、俺のせいで足腰立たなくなってんだ。」

あたしは言葉を失った。
何を、そんな。
脅すみたいに、威圧的な言い方で。
こいつはほんとに、ユキなの?

「結婚はやめろ。」

手を離して、ユキが言った。
なんであんたに命令されなくちゃなんないの。
あたしはユキを睨みつけた。

「一回寝たからって彼氏ヅラしてんじゃないわよ!」

< 26 / 98 >

この作品をシェア

pagetop