スノー アンド アプリコット

◆◆◆

あいつは、切り時なのか。

あたしはシャーペンをくるくる回しながらぼんやり考える。
結婚が決まってから、周りの男は全部切った。
身体だけの関係の男、気を持たせたら何でも奢ってくれる男、とにかく尽くしたがる男、貢ぎたがる男、待ち続ける男ーー…

色々いたけど、時にはユキを使ってーーああいう時、ユキは実に使える奴だった、的確な判断であたしの芝居に合わせてくるーーまあ概ね首尾よくいった。

まさかそのユキを切る日が来るとは思ってもいなかった。
ていうか、切る対象じゃなかった。
ユキは男じゃなかったから。

『お前、忘れてるかもしれないけど、俺、男だから。』

やたら色っぽい声が耳に蘇る。
また、ドクン、と心臓が波打った。

『力じゃ絶対俺に敵わないよ。』

まるで今まで力加減してやってたとでも言いたげな声。
あたしはそんなこと一度も頼んでないのに。
勝手にあっちがあたしのまわりをうろちょろして、勝手に下僕になってきただけだ。
それを何、今更。

まあ、だから、それも他の男たちと一緒なのか…
どこか腑に落ちないながら、あたしはそう結論づけようとする。
あたしは誰にも、好きになってとも、抱いてとも頼んでいない。

「切るか……」

切ったら。
ユキのいない人生か。

あまり想像がつかなかった。

いや、ユキがいない期間だってあった。だけどあたしは普通に生きていた。

……普通に?

「里中さん、手動かしてねー」

厭味ったらしい声が思考を遮った。
あのクソババアだ。

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