スノー アンド アプリコット
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あいつは、切り時なのか。
あたしはシャーペンをくるくる回しながらぼんやり考える。
結婚が決まってから、周りの男は全部切った。
身体だけの関係の男、気を持たせたら何でも奢ってくれる男、とにかく尽くしたがる男、貢ぎたがる男、待ち続ける男ーー…
色々いたけど、時にはユキを使ってーーああいう時、ユキは実に使える奴だった、的確な判断であたしの芝居に合わせてくるーーまあ概ね首尾よくいった。
まさかそのユキを切る日が来るとは思ってもいなかった。
ていうか、切る対象じゃなかった。
ユキは男じゃなかったから。
『お前、忘れてるかもしれないけど、俺、男だから。』
やたら色っぽい声が耳に蘇る。
また、ドクン、と心臓が波打った。
『力じゃ絶対俺に敵わないよ。』
まるで今まで力加減してやってたとでも言いたげな声。
あたしはそんなこと一度も頼んでないのに。
勝手にあっちがあたしのまわりをうろちょろして、勝手に下僕になってきただけだ。
それを何、今更。
まあ、だから、それも他の男たちと一緒なのか…
どこか腑に落ちないながら、あたしはそう結論づけようとする。
あたしは誰にも、好きになってとも、抱いてとも頼んでいない。
「切るか……」
切ったら。
ユキのいない人生か。
あまり想像がつかなかった。
いや、ユキがいない期間だってあった。だけどあたしは普通に生きていた。
……普通に?
「里中さん、手動かしてねー」
厭味ったらしい声が思考を遮った。
あのクソババアだ。