スノー アンド アプリコット
薄いピンクの生地に黒いレースをあしらったブラから溢れんばかりの、たわわで真っ白な胸に、きゅっと細いウエスト。
男なら誰でもむしゃぶりつきたくなるような身体をしているのに、すっぴんの小さい顔は、ベビーフェイスと言っていいくらい、あどけない。そのくせ、ぷっくりした唇はいつでもキスをねだっているみたいな形をしている。
このなんともいえないフェロモンを撒き餌に、一体何人の男を釣ってきたのか。俺は把握しきれていない。
「……さっさと服着ろ!」
タオルケットを下着姿にあやしく絡ませて、襲って下さいと言わんばかりの格好をしていても、コイツは俺を誘ってなんかいない。目を釘付けにされたら、容赦なく枕か蹴りが飛んでくる。
だから俺はいつも通り無理矢理視線を引き剥がす。慣れたものだ。何事も鍛錬だ。
「朝ご飯!」
「ハァ? 急いでんじゃねーのかよ。」
「余裕持って起床時間は設定してんの! 社会人の基本! 呑気な学生は知らないでしょーけど!」
「誰が呑気だ、あぁ? 医大生なめんな!」
「あたしは朝ご飯食べないと頭が働かないのよ!」
「自分で作って勝手に食え!!」
言いながらも俺は立ち上がってしまう。惚れた弱みだ。俺も朝ご飯は食べる主義だし。
俺がシンクに向かうのを見て満足したのか、杏奈は昨日酔っ払って床に脱ぎ散らかした服を拾い集めている。ぷるんぷるん、胸と尻を揺らしながら。
恥も何もない。
男として甜められている、より、もっとひどい。男として見られていない。