スノー アンド アプリコット
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ねたみ、やっかみ、僻み、怖れ、反感――…
女子生徒たちからのそんな視線を一身に浴びながらも、杏奈はその男好きのする顔とスタイルで、男子生徒にはモテまくっていた。
始業式の日以来、俺は毎朝毎朝、杏奈を自転車の後ろに乗っけて登校していて、それはもはや朝の名物だった。
中等部とはいえ、高等部の女子生徒から告白されたことも一度や二度ではなかった俺は、周りからは当然杏奈の彼氏だと思われていた。というか、俺自身も、彼氏"みたいなもの"だと思っていた。
が、杏奈はあろうことか、なんと、高等部3年の生徒会長と付き合い始めた。「なんか告られたから」らしい。
文武両道を地で行く学園の象徴のような生徒会長をモノにしたことで、杏奈の学園内でのヒエラルキーへの位置づけは、混乱を極めた。
………まあ、一ヶ月と経たないうちに振ったのか振られたのか、別れていた(噂では杏奈がこっぴどく振ったことになっていた)のだが...
杏奈のその強烈さは、一種の憧れを引き起こすらしい。
まだ無邪気さが残る中等部では、杏奈は人気があった。俺の友達と一緒になって騒ぐこともあった。
無遠慮に中等部の校舎に出入りして、辞書を貸せだのジュースを買ってこいだの、俺を顎で使う杏奈は、女子にはやっぱり最初は疎まれていた。
だけど杏奈が面白がって俺に想いを寄せるそいつらの相談に乗ってやったりしたものだから、おかしな具合に打ち解けていってしまった。
…もちろん、そのアドバイスはちんぷんかんぷんだった。俺は多大な迷惑を被った。
ユキはこの香りが好きだからとか言って誰かにあげた(たぶん気に入らなかった)香水の情報が出回って、
相当数の女がつけて登校したある日、校舎がおかしな匂いで充満する阿鼻叫喚の事件まで起こった。
一方で、高等部の男からは次々に告白され、次々に付き合った男が切られていった。
結局、付き合っていない俺だけが、ずっと杏奈の傍に残っていた。
そうして俺は杏奈の家に上がることが多くなる。